アナウンサーをやめて留学する――

大きな決断のように見えて、実はそれほどエネルギーを要したわけではなかったといいます。『肩肘張って自分で波を起こさなくていい。波が来た時にポンと乗ればいい』。かつて五木寛之さんに言われた言葉は、今でも胸に残っているそうです。「特にきっかけはなかったんです。でも、小さな波が起きていることに気がついて。だったらもう乗ってしまおうって」と穏やかに笑います。

再びアナウンサーとして単身日本に戻る決意をしたのは’16年。背中を押してくれたのは、当時13歳だったお嬢さんのひと言でした。「ママ、あの仕事は諦めちゃだめだよ」。その瞬間、崩れるように泣いてしまった、と雨宮さん。「思春期の子どもが自分ではなく、まず親である私の人生を思ってくれている…。今度は私の番だと。子供たちのやりたいことは全力で背中を押そうって、子供に心配をかける重い親にはなるまいって、自分の中に小さなルールがいくつもあります」

パリでの暮らしは穏やかで、日常には派手なこともほとんどないそう。「公園で芝生に寝転んだり、春の陽射しの中でテラスに座ってお茶を飲むだけで幸せを感じます。日本にいたら“日焼け止め塗らなきゃ”と思うけれど、パリではどうでもよくなる（笑）。今を楽しまないともったいない！って心底思うんです」

「“無理しないで”という言葉は、あまり得意でなくて。私は無理しちゃうのが好き。エネルギーは使いたい人に最大限使いたい。エネルギーを出し惜しみしてどうするの？って思っています。失敗することより、やらない後悔のほうが怖いから」。そう語る雨宮さんはいま、YouTubeという新しい挑戦にも取り組んでいます。「カメラマンさんはパリに来た頃からのご縁。初心を思い出すような感覚です。何を撮るか、どう伝えるかを考えるのも楽しくて。改めて“言葉”が好き。“伝えること”も大好きだなって実感しています」